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TOPコラム新米獣医さんの留学日記in ニュージーランド③

新米獣医さんの留学日記in ニュージーランド③

2023/10/16

Kia Ora! 皆さんこんにちはKurumiです。

まだ大学に来たばかりの頃、学生がやたら「sweet！（スィート！）」と返してくるも、全く意味がわからない時がありました。気になって聞いてみると、特に意味なんてなく、ただの返事だよと教えてくれました。英語にはスラング（日常会話でよく出てくるフレーズだけど辞書には載ってないもの）があるのですが、英語が第一言語ではない外国人にとってはこれがさらにコミュニケーションを難しくします。スイートと聞くと日本人だと甘い物（スイーツ）とか想像しちゃうと思いますけど、返事のsweetはokとかgreatみたいな意味みたいです。sweetは甘いだけじゃなく“優しい”という意味もあるので、海外だと「この子（人でも動物でも）優しいね」と言いたい時は「He(She) is sweet」なんて言ったりします。

さて、本題に入りますが、今回のお話は、犬の帝王切開。私にとっては初めての経験であり、とても勉強になった機会でした。サムネの写真も実際にその時に生まれたベイビーたちです。

① 自然分娩と帝王切開

犬の出産も人間と同じように自然分娩と帝王切開の2つに分かれます。

帝王切開を選ぶ理由ってなんでしょうか。以下の理由が挙げられます。

■難産：自然分娩を試みたけれど赤ちゃんが出てこない。

■赤ちゃんの頭が大きい/お母さんの骨盤出口が小さい：短頭種（フレンチブルドック、ボストンテリア、パグなど）、小型犬など

■頭数が少なすぎる：赤ちゃんから分泌される分娩を刺激するホルモンが不十分。

■頭数が多すぎる：お母さんの負担が大きく、最後の方の分娩が上手くいかない可能性。

今回の症例はブルドックでしたので、ドクターは帝王切開を選びました。

② 帝王切開の実際

帝王切開の麻酔は通常の麻酔とはちょっと異なります。それは赤ちゃんや母体への影響を考慮し、安全な麻酔薬を選択し、必要最低限の麻酔量に収め、できる限り短時間に済ますことです。

そしてもう一つ重要なのが人手の確保です。犬は多産ですから、多くのスタッフも次の子が取り出されるまで待機します。この時はいろんな科の看護師や学生が駆けつけてくれました。

母体から赤ちゃんが取り出した後は、赤ちゃんをタオルに包み優しく身体を擦り呼吸を刺激します。その間、酸素マスクをかがせながら、口の中に溜まった羊水や膜などを吸引し、さらに自力で呼吸ができるよう補助します。（筆者も夢中で手伝っていました）
生まれてから、ものの数分で産声が聞こえるはずですが、これが実際にはとてつもなく長く感じます。産声を聞けたなら、一安心。あとは臍の緒をしっかり処置して、温かい保育器に入れてモニタリングしていきます。

今回の帝王切開では、無事一頭も欠けることなく全頭の産声を聞くことができ、達成感と共にとても嬉しかったです。生まれた赤ちゃんの可愛さに癒されながら幸せな一日となりました。

いかがでしたか？

実は帝王切開ってそんなに多い手術ではないので経験の少ない獣医さんも多いです。しかし、一度見たら忘れられないほどインパクトのある手術だと感じました。

次回は犬が食べても安全な食材について掲載する予定ですので、楽しみにしていてくださいね！