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新米獣医さんの留学日記in ニュージーランド②

2023/08/15

Kia Ora！こんにちはKurumiです。

ジリジリとした暑さが続いていますが、みなさんお元気ですか？

ニュージランドはなんと今は冬です！

ニュージーランドは南半球に位置するため、日本とは真逆の季節になります。

日本と同じように四季があり、7〜8月は冬に当たります。ニュージーランドの気候は穏やかな日が多いので、夏も冬も気温の変化が日本ほど大きくなく過ごしやすいです。

ニュージーランドにいる間、筆者はマッセイ大学に通っていましたが、実はマッセイ大学はニュージーランドで唯一の獣医学科を有する大学です。(日本は私立国立合わせて17校もあります)

その広大な敷地の中には小動物（犬、猫、うさぎ、モルモットなど）だけでなく大動物（馬、牛、羊など）の診療所を備えます。

診療所の中は外科、内科、腫瘍科、放射線科、麻酔科など、多岐に分かれていますが、筆者はその中でも特に麻酔科に属し、様々な動物の麻酔を経験しました。

麻酔といってもあまりピンとこないかもしれないので、今回は麻酔の基本的なお話しをしようと思います。

⚫︎麻酔とは？

私たちだったら「じっとしていてね〜」と言われたらその通りにできますが、動物たちはそうはいきませんよね。動物の場合は、手術だけでなく、様々な検査（CT、MRI、内視鏡検査など）で長時間じっとしていて欲しい時にも麻酔をかけることがあります。

麻酔の目的は大きく1.鎮静、2.鎮痛、3.不動化の3つに分かれます。

1.鎮静

鎮静は動物の意識をぼんやりさせ、周囲から受ける不安な恐怖を和らげます。

2.鎮痛

鎮痛は手術や処置によって起こる痛みを和らげます。

3.不動化

不動化は例え無意識でも様々な刺激に反応してしまう体の動きを止めることを言います。

麻酔に使われる薬剤はこれら3要素の中で得意不得意があるので、通常麻酔をかける時は1つの薬剤だけでなく、さまざまな薬剤を組み合わせて使います。

⚫︎麻酔って安全なの？

100％安全とは言えませんが、近年の麻酔技術の向上により麻酔事故はほとんどみられなくなりました。しかし依然として、麻酔に関連して亡くなってしまう犬は0.1~0.14%（約1000頭に1頭）と報告されています。

このリスクを限りなくゼロにするために、麻酔をかける前に麻酔をかけても大丈夫なのかを検査をして、きちんと評価することが大切です。

高齢だから麻酔をかけられないという話をよく耳にします。

確かに年齢は麻酔のリスクを上げる一つの要因でもありますが、高齢だと麻酔がかけられないわけではなくて、心肺機能や肝臓や腎臓の状態が歳をとってくると若い子に比べて弱くなってしまうからです。麻酔前の検査でこれらの臓器に問題がなければ麻酔は安全にかけることができます。

⚫︎どんなふうに麻酔をかけるの？

麻酔のかけ方には４つの順番があります。

⚫️ニュージーランドの麻酔

麻酔のかけ方に大きな違いはありませんが、ニュージーランドの場合は、麻酔から覚めた後すぐにご飯を与えます。

これは、元々人の医療において、術後早めに食事を再開すると腸の運動を活性化させ、回復を早め、退院するまでの時間が短くなることが分かったからです。

獣医療での研究はまだ少ないですが、術後すぐに口から食べられない場合（消化器系の手術、過度に嘔吐してしまうなど）を除き、動物でも同じような効果を得られることが分かってきました。ニュージーランドを含め、海外では術後早期に食事を再開することが広まりつつあります。

日本にいた時にはこのような考え方を知る機会はありませんでしたので、筆者にとっては目から鱗の情報でした。日本でも、この考え方が広まっていくといいなと思います。

いかがでしたか？

やや専門的なお話になりましたが麻酔について少しでも知ってもらえたら嬉しいです。

次回は犬が食べてはいけない食材について掲載する予定ですので、楽しみにしていてくださいね！

【参考文献】

1. Stephanie Jw Shoop-Worrall, et, al. Vet Anaesth Anag. 2022. DOI: 10.1016/j.vaa.2022.03.006

2. Veterinary Anesthesia and Analgesia the Fifth Edition